トランプ氏による台湾総統の「呼び方」について

 12月2日、トランプ氏が台湾総統である蔡英文総統と電話会談した。電話会談自体が「一つの中国」の原則を掲げる中国を刺激するものであるし、日経新聞が論じているとおり「台湾を国家として認めない中国をけん制」する目的があるのだろう。

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【出典】 「トランプ氏、中国けん制 台湾総統と電話協議 」『日本経済新聞』2016年12月4日

 

 電話会談をめぐる一連の出来事で興味深かったのは、電話会談後のTwitter上でトランプ氏が蔡英文氏を「The President of Taiwan」と呼んだことである。「台湾の総統」という言い方に注目したい。ここで思い出されるのは、2015年11月7日の中台首脳会談における中国の習近平国家主席と台湾の馬英九総統それぞれの呼び方である。

国営通信社の新華社は「会談時は互いに『先生』(日本語の「さん」に当たる)と呼ぶことが双方の協議で決まった」と報じた。台湾を中国の一地域としている以上、習国家主席が馬総統を「総統」と呼ぶことは難しい。そのため、双方とも一般的な敬称である「さん」を付けて、「習さん」「馬さん」と呼ぶというわけだ。互いをどのような敬称で呼ぶかを協議するのは滑稽とも言える一方、中国と台湾の66年にわたる分断の歴史を物語ってもいる。

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【出典】「中台首脳会談、呼び方は「習さん」「馬さん」で」『日経ビジネスオンライン』2015年11月5日

 

  トランプ氏と蔡英文氏の電話会談にあたっては、政権のブレーンとも相談の上でのことであろうし、昨年の中台首脳会談における呼び方のことも念頭にあったかもしれない。そうであれば、トランプ氏が「The President of Taiwan」と呼んだことは、スパイスのきいた、うまい「皮肉」であると思えてくる。