「保育園落ちた日本死ね」の発言と丸山眞男
2016年のユーキャン新語・流行語大賞が発表された。その中の一つとして「保育園落ちた日本死ね」が選ばれたことについて、賛否両論を呼んでいる。
【出典】新語・流行語大賞
例えば、この言葉の受賞について、つるの剛士さんがTwitterで「悲しい気持ち」になったと表明。多くのリプライが寄せられている。
(´・ω・`)oO(『保育園落ちた日本死ね』が流行語。。しかもこんな汚い言葉に国会議員が満面の笑みで登壇、授与って。なんだか日本人としても親としても僕はとても悲しい気持ちになりました。きっともっと選ばれるべき言葉や、神ってる流行あったよね。。
— つるの剛士 (@takeshi_tsuruno) 2016年12月1日
皆さんは如何ですか?#流行語大賞
表現として確かに「汚い言葉」であるし、しかしだからこそ、育児を抱える人達の悲痛な叫び声として注目を集め、「大きな社会問題を現出させた」(選考理由)たのであろう。賛否両論あるのは致し方と思うが、以下のような丸山眞男『日本の思想』の指摘を踏まえると、非常に高く評価されるべきだと思う。
周知のように、日本では私たち国民が自分の生活と実践のなかから制度づくりをしていった経験に乏しい。歴史的にいっても、たいていの近代的な制度はあらかじめでき上がったものとして持ち込まれ、そのワクにしたがって私たちの生活が規制されてきたわけです。それでおのずから、まず先に法律や制定の建て前があってそれが生活のなかに降りてくるという実感が強く根を張っていて、その逆に、私たちの生活と経験を通じて一定の方や制度の設立を要求しまたはそれらを改めていく発想は容易に広がらない。
今回の「保育園落ちた日本死ね」の発言は、丸山が求めていた「私たちの生活と経験を通じて一定の方や制度の設立を要求しまたはそれらを改めていく発想」であろう。丸山が存命であれば、高く評価したのではないか。
<参考文献>